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多摩の椛

パンジービオラの育種家として交配を重ね続ける秋田茂良が作り出した日本の色

多摩の星空から始まり、2022年冬現在、さらに3つのオリジナル品種が登場しています。その中でも多摩の椛(もみじ)について誕生秘話をお伝えします。

○秋田茂良が作り出したい日本の色

育種とは、品種の違う植物を掛け合わせて新しい花を生み出すものです。といっても特別なものではなく、自然界ではミツバチが花と花を渡り歩き、その際に自然に交配するもの。その自然界の現象を人が意図的に交配するのが”育種”というものです。
交配自体はそれほど難しくなく、花の雌しべと雄しべを擦り合わせ花粉をつけることでやがて種となり次にまた花を咲かせていきます。
その中で育種は「こんな花を作りたい」というイメージを膨らませ、そこにたどり着くにはどんな花を掛け合わせたらいいのかな?と長い長い年月をかけて思い描くイメージに近づけていくのです。それを秋田は「重ねる」と言います。

花と花を重ね、時を重ね、情熱を重ねる。交配し成長した何千もの花の中から”これだ!”というものを拾いあげ、また重ねる。途方もくれる作業の中、イメージに辿り着ける確約もないまま、何年も情熱を重ねて交配を繰り返します。

2022年の多摩の椛

秋田茂良が目指す育種の方向性の一つとして”日本の色”というテーマがあります。
古来より日本で親しまれている伝統の色を花で表現したい。そこに明確な色の定義はないけれど、「これは日本の色だね」と日本人が自然と感じ取れる色を目指しています。先に生まれた多摩の星空もその日本の色を表現しています。

○多摩の椛(もみじ)の誕生

秋田はパンジーの中輪咲きを作りたいと交配を進めていました。こんな色にしたいという明確なイメージはないなか、ピンク〜赤〜紫まで幅広い色合いの花が生まれていました。
そもそも中輪パンジーを作りたいという想いのルーツは、「寄せ植えで映えるパンジーが欲しいな」と思ったのがきっかけだそうです。

その当時、秋田は”ギャザリング”という寄せ植えを学んでいました。ギャザリングの面白さ、植物を新しい形で表現する楽しさにハマり、そしてギャザリングをもっと世の中に広めたいと希望を抱いていました。そのため、寄せ植えにキラリと映える中輪パンジーを重ねていました。

そんな中、秋田緑花農園の花を使ってギャザリングを紹介して欲しいという要望がNHKのテレビ番組から上がりました。そこで、この中輪パンジーを紹介しようと考えます。そして番組には、生産者として秋田が花を紹介し、寄せ植えは花屋さんにお願いしたいと考え、アトリエ華もみじ(福岡の寄せ植え専門店)に出演をお願いすることになりました。

どのパンジーが使いたい?と育っている花の写真を見せ、「これめちゃくちゃ可愛いですよ!」と花屋さんが褒めてくれる。そして番組で制作した寄せ植えのパンジーはとても華やかに作品の中心でキラリと輝いていました。

「そうか、こんな感じの色合いと丸みのある形が世間には評判いいんだな」作り手の表現したいデザインと、使ってくれる人の好み。それを両方兼ね備えている花なんだなと感じたと言います。

そして、このパンジーをオリジナルとして名前をつけることにしました。使ってくれた花屋さんの「もみじ」という名前から、そういえばこの花の色幅やグラデーションはもみじの木の紅葉に似ている、自分が表現する”もみじ”を重ねていこうと決めました。

そして、多摩地区の「多摩」と自然の美しさと彩りを表す「椛」という漢字を使うことになったのです。

○これからの多摩の椛。使ってくれる方に伝えたいこと。

多摩の椛が誕生して5年。その中でも少しずつ進化しながら今では多摩の椛を楽しみに待ってくれる方がいるようになりました。人気の秘密は何でしょうか?と秋田に質問すると、それは寄せ植えに使ってくれる人、それぞれのストーリーが重なっているからだと言います。

多摩の椛で作られたたくさんの美しい寄せ植えの写真がSNSで広まっています。それは多摩の椛の可愛らしさに共感した植えて手の方の想いとストーリーが込められた形で発信されていきます。それぞれ違う人の想いを込めた作品だからこそ、素材の美しさが際立ちます。
秋田が重ねてきた時と情熱、そして手に渡った人々の想いとストーリー。それが合わさったからこそ、素晴らしい作品として完成したのではないでしょうか。

多摩の椛をふんだんに使ったリース

秋田は言います。多摩の椛の今の可愛さは”今”しかないものです。育種はずっと同じ個体ができないため、次に新しいものを重ねて変化させていかなければなりません。今の美しさ、可愛さは今しかないので、今を存分に楽しんでもらえたら嬉しい。

今年も多摩の椛は癒しの種として全国に旅立ちます。楽しみにお待ちくださいね!