2024-08-16

『多摩の椛』物語 -vol.2-

ご先祖様をお迎えして、報恩の供養をするお盆。
報恩とは恩に報いるとか、恩返しという意味があるそうです。

農園では8月13日〜16日がお盆の期間でした。
この場所を守ってきた人が居たからこそ、私たちは、花農家として仕事を続けています。
ご先祖様に心から感謝したいと思います。

10月半ばはまだ小さくかよわい花姿。最初の一輪を見つけると出会えた嬉しさが込み上げてきます。

さて、前回の投稿の続きとして、多摩の椛(もみじ)のことをご存知ない方に、誕生した経緯をご紹介しますね。

▼前回の投稿はこちら

2015年頃からパンジービオラの育種を初めていました。
育種とは色形の違う花の花粉をかけ合わせ、新しい花を作り出すことです。
当時から変わらない育種コンセプトは「自分らしい日本の色」。

育種家の平塚弘子さんから引き継いだ数々の品種から、自分らしい色を探し、その花から種を取っていましたが、オリジナルといえる花は、まだ出てきていませんでした。

そんな折、2017年のことでした。
NHKの「ひるまえほっと」という番組のディレクターの方から、ギャザリングの紹介を番組でして欲しいという依頼がありました。
その当時、僕はギャザリングという寄せ植えの方法で作品を作ったり、陶芸家の方とコラボして個展などを開いたりしていたので興味を持ってくれました。
依頼されたものの、花農家の私が出演するより、教室を開いている「アトリエ華もみじ」の小森さんが出た方が視聴者に伝わると思いました。

小森さんも快諾してくれて、どうしたらギャザリングの楽しさや、心地よさが伝えられるかを一緒に話し合いました。
そして撮影に使う花として、小森さんが選んだ小輪パンジーが『多摩の椛』でした。当時はまだ名前はついていません。花の色は、赤茶ベースにブロッチ(花弁に黒の模様)でした。

「多摩の椛」と、同じく農園オリジナルビオラの「多摩の星空」を存分に使った作品。

渋谷のNHKスタジオでの生放送。
小森さんのデモンストレーションを固唾を飲んで見守ったことが懐かしいです。
後で放送を見ましたが、小森さんが選んだ赤いパンジーは、とても写りが良かったです。
凛とした表情の自分が作り出したパンジーをテレビを通して見る。そんな初めての経験に感動しました。

▼当時のことを、小森さんがアトリエ華もみじのブログで綴ってくれていました。
若かりし頃の2人の姿も!

『その花』の親(種を取った親株)を育種記録のノートから調べ、保管してあった種を蒔き直し、同じ交配を再現しました。その種を蒔いて育てた花は、とても美しく、赤、紫、黄、紫という色の変化を見せてくれました。

そこから『多摩の椛』という名前になったことは想像しやすいですよね?
小森さんが選んだところから生まれた花が『多摩の椛』だったというわけです。

赤系の色は、真冬も暖かく過ごせそうなこっくりと温もりのある色。
オリジナルの葉牡丹ブーケと合わせると、よりキュートさが際立ちます。

思い返すと、一つの花が生み出されるまでに、沢山の人のご協力やご縁がありました。
宮崎の川越ロカさんもそうです。多大なるお力添えを頂きました。

お盆の時期に人の繋がりを感じながら、「多摩の椛」が紡ぎ出された物語を書き綴れたことに意味を感じます。

そしてギャザリングとブリコラージュフラワー、呼び方は違いますが、作品に自分を表現するということは変わりはありません。

『多摩の椛』は”表現する人のためにある”という使命を持って生まれてきたのかもしれませんね。

▼『多摩の椛』物語-vol.1

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