いつのまにやら、吹き付ける風の冷たさに身を縮める季節になってきました。
それもそのはず、秋の半ば秋分も過ぎて、10月8日からの暦は寒露。
ついに暦にも「寒」という文字がやってきました。ここ最近の急な冷え込みを鑑みるに、言い得て妙だなと感じてしまいます。
毎年夏になると、毎日毎日暑いのが当たり前すぎて、「あれ、寒いってどんな感覚だったっけ」という気持ちになってしまうのは私だけでしょうか。
「当たり前」って不思議なもので、何かを当たり前に思ってしまうと、だんだんと感覚が鈍ってくる。
音や匂いや空気、周りの世界に対するアンテナみたいなものでしょうか。それがどんどん鈍くなってきて、ああ、今日も暑いなあ。それで終わり。
そんな「当たり前」になり始めてしまった自分の感覚に、コンコンってノックしてくれるのが、この季節が連れてくる空気だと私は思うんです。
せかせかと動かしていた足を止めて、ふと見上げた空が、なんだかやけに遠くなったように感じて目を細めたり。
ちょっと雲が増えてきた途端、吹き付けてくる冷たい風にびっくりして、あんなにうんざりしていたお天道様が恋しくなってきたり。
あたりを見回すと、あちこち飛び回るトンボの群れに、どことなく漂ってくるほんのりとした金木犀の香り。
あれ、いつの間にか「当たり前」だと思っていた空気が変わり始めている。
一歩ずつ季節が進んだり、時々ちょっと戻ったりしている、今はそんな季節の狭間。
そこに「当たり前」は全然なくて、毎日がちょっとずつ違った表情を見せてくれます。
なんだか今日は秋が少し深まった匂いがするな。
あれ、ちょっと今日は夏の陽気が蒸し返してきたかも?
うわ、今日はもう冬がすぐそこまで迫ってきてる感じがする。
毎朝、窓を開けるのがわくわくしてしまうようなこの季節が、私は一年で一番好きだったりします。
そうそう、秋の長雨の季節が終わり、晴れの日が増えてくるこの季節。
そんな秋晴れの日を、菊晴れって呼ぶらしいです。
綺麗に咲いた農園のマムたちを眺めながら、菊晴れの空を仰いでみる。
思わず、秋だなあ、としみじみ感じ入ってしまいました。
日々は当たり前だと思ってしまうと、あっという間に味気なく過ぎていきます。
忙しない中でも時々立ち止まって、農園の豊かな自然がもたらしてくれる様々な気配に、耳を澄ましていきたいです。
ほら、冬の足音がもうすぐそこまで迫ってきている気がしませんか。
スタッフ 野中